コヒロハハナヤスリ  小広葉花鑢
[別名] フジハナヤスリ、ナガバハナヤスリ、ハナヤスリ
[中国名] 柄叶瓶尔小草 bing ye ping er xiao cao
[英名] stalked adder's-tongue
[学名] Ophioglossum petiolatum Hook.
ハナヤスリ科   Ophioglossaceae  ハナヤスリ属
三河の植物観察
コヒロハハナヤスリの胞子葉2
コヒロハハナヤスリの胞子葉
コヒロハハナヤスリの胞子嚢
コヒロハハナヤスリ
コヒロハハナヤスリ2
コヒロハハナヤスリ葉表2
コヒロハハナヤスリ葉裏
コヒロハハナヤスリ茎
 湿った場所に生え、畑などでも見られる。夏緑性、地上部の生育期間は4~11月と長い。和名のハナヤスリは胞子嚢穂が棒ヤスリに似ていることに由来する。
 植物は高さ15~25㎝、根茎は直立、太く、肉質の根の束をつける。根は匍匐枝のように水平に広がり、先の芽から新し植物を生じる。葉は1個、普通の茎(common stalk )は長さ9~15㎝。栄養葉は無柄(細長くなり有柄にも見える)、卵形~広卵形、長さ3~6㎝×幅2~3㎝、草質、基部は長くなり、円形、先は鋭形又は鈍形、脈はかなり明瞭、網状。胞子葉は栄養葉の基部から生じ、長さ6~9(16)㎝、線形、非常長い柄があり傾伏~斜上し、先の胞子嚢穂が直立する。胞子嚢穂は長さ2.5~3(4.5)㎝。胞子表面は明らかに類網状、細かい顆粒をもつ。 2n = 960~1100。
[草丈] 15~25cm
[生活型] 夏緑性(4~11月)
[生育場所] 開けた低木の丘陵、湿地、溜池畔、道端など湿った場所
[分布] 在来種  本州(山形県・宮城県以南)、四国、九州、沖縄 、朝鮮、中国、台湾、インド、ネパール、スリランカ、フィリピン、タイ、太平洋諸島、オーストラリア、ニュージーランド
[撮影] 名古屋市   18.6.25

 ハナヤスリ属

  Family:  Ophioglossaceae - genus Ophioglossum

 植物は地上生、まれに着生、普通、小さく、直立し、まれに大きく、垂れ下がる。根茎は直立、まれに這い、短く、無毛又は長毛がある。葉(frond)はしばしば1個、たまに2個、まれにそれ以上。栄養葉 (sterile lamina=trophophore)は柄があり、普通、単葉、披針形~卵形~リボン形、まれに2分裂し、縁は全縁又は波状、中脈は不明瞭。脈は網状。担胞子体=胞子葉(sporophore= fertile frond)は基部、基部付近、あるいは栄養葉の中間部分から生じ、長い柄がある。胞子嚢(sporangia)は線形の穂の縁に沿って、2列に埋め込まれる。胞子嚢は数個の細胞が基になった胞子嚢壁から出来る。胞子嚢壁は大型で数層の細胞層からなり、1個の胞子嚢には数百~数万個の胞子が含まれる。胞子の表面は不規則な網状、小穴状又はほぼ平滑。
 世界に約28種があり、主に北半球に分布する。

 ハナヤスリ属の主な種

 1  Ophioglossum austroasiaticum M.Nishida  タイワンハナヤスリ
 台湾、インドネシアに分布。中国名は高山瓶尔小草 gao shan ping er xiao cao
 植物は高さ10~20㎝。根茎は直立し、円筒形。普通の柄は長さ6.5~7.5㎝。栄養葉は無柄、類円形又は広卵形、長さ約3.5㎝、幅約3㎝、基部は心形、先は円形。葉脈の小区画は細脈と小さな区画をもつ。胞子葉は栄養葉の基部近くから生じる。胞子表面は粗い網状。
 2  Ophioglossum kawamurae Tagawa  サクラジマハナヤスリ
 日本(東京、鹿児島)に分布。
 3  Ophioglossum namegatae M.Nishida et Kurita  トネハナヤスリ
 日本(利根川水系、淀川水系)に分布
 氾濫原に生育し、高さ5~25㎝。地上生。夏緑性、4~6月に出て、夏に地上部は消滅する。栄養葉は長さ2.5~11㎝、幅1~4㎝、へら形。葉柄は長さ1~2.8㎝。胞子葉は長さ6~15㎝、棒状。球果(strobile)は長さ1.5~3.5㎝。胞子は直径25~27μm。2n=240。
 4  Ophioglossum parvifolium Grev. et Hook.  イオウジマハナヤスリ
    synonym Ophioglossum nudicaule auct. non L.f.
  絶滅種。
 5  Ophioglossum parvum M.Nishida et Kurita  チャボハナヤスリ
 日本(静岡、伊豆青ヶ島)分布。日当たりのよい原野に生育し、小型。栄養葉は狭披針形~楕円形、長さ0.5~1.5㎝。胞子葉は長さ1㎝以下。
 6  Ophioglossum pendulum L.  コブラン
 日本(東京、鹿児島、沖縄)、朝鮮、中国(海南省、雲南省)、台湾、インド、インドネシア、スルランカ、マレーシア、フィリピン、アフリカ、オーストラリア、太平洋諸島に分布。和名は葉が昆布に似ていることに由来。中国名は带状瓶尔小草 dai zhuang ping er xiao cao 。
 樹上に着生する。葉は1~3個又はそれ以上。栄養葉は無柄、垂れ下がり、リボン状(昆布状)、普通、披針形、ときに、2裂し、長さ30~50(~100)㎝×幅1~3㎝以下。脈は網状、明瞭な中脈が無く、斜めや六角形の小区画を形成する。細脈が見える。胞子葉は基部近く又は栄養葉中間から生じ、栄養葉より長くならず、垂れ下がり、柄は7㎝以下、胞子穂は長さ5~30㎝。胞子嚢は両側に40~200個ずつつく。胞子は無色又は淡黄色、四角形、表面に小孔がある。2n = 740-960。
 7  Ophioglossum petiolatum Hook.  コヒロハハナヤスリ
 日本、中国、インド、ネパール、スリランカ、インドネシア、フィリピン、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島に分布。北アメリカ、西インド諸島、メキシコ、南アメリカ北部、に帰化。英名はStalked adder's-tongue 。中国名は柄叶瓶尔小草 bing ye ping er xiao cao 。ハナヤスリの名は胞子穂が棒ヤスリに似ていることから。
 開けた低木の丘陵、湿地、溜池畔、道端など湿った場所に生育し、地上部は4~11月。 植物は高さ15~25㎝、根茎は直立、太く、肉質の根の束をつける。根は匍匐枝のように水平に広がり、先の芽から新し植物を生じる。葉は1個、普通の茎(common stalk )は長さ9~15㎝。栄養葉は無柄(細長くなり有柄にも見える)、卵形~広卵形、長さ3~6㎝×幅2~3㎝、草質、基部は長くなり、円形、先は鋭形又は鈍形、脈はかなり明瞭、網状。胞子葉は栄養葉の基部から生じ、長さ6~9(16)㎝、線形、非常長い柄があり傾伏~斜上し、先の胞子嚢穂が直立する。胞子嚢穂は長さ2.5~3(4.5)㎝。胞子表面は明らかに類網状、細かい顆粒をもつ。 2n = 960~1100。

 8  Ophioglossum reticulatum L.  ナンゴクハナヤスリ
 汎熱帯性。
 多年生。栄養葉は長さ5~8㎝、幅4~5㎝、胞子葉は長さ20㎝以下。根茎は円筒形、長さ5~20㎜、宿存する太い根をもつ。植物は雨季の間だけ、地上に存在する。匍匐枝により広がり、かなり広がったコロニーをつくる。葉は植物が生育する多くの地域で人気のある山菜であるが、採取には時間がかかる。ときに地方のマーケット売られている。植物は作物として栽培いないが、ときに医療用にポットで栽培される。2n = 1440。
 9  Ophioglossum thermale Kom. var. thermale  ハマハナヤスリ
 日本、朝鮮、中国、台湾、ロシアに分布。中国名は狭叶瓶尔小草 xia ye ping er xiao cao
 海岸の砂地や内陸の湿地に生育し、地上部は4~11月。植物は高さ10~20㎝。根茎は直立、細く、不分枝の肉質の根を束生する。根は匍匐枝に似ていて、先端に新しい植物を生じる。葉は1個又は2~3個。普通の茎は緑色又は下部が地下に埋まったときに淡色になり、長さ3~6㎝、細い。栄養葉は1個、無柄、薄緑色、倒披針形又は長楕円状倒披針形、長さ2~5㎝×幅3~10㎜、草質、基部は狭い楔形、縁は全縁、先はわずかに鋭形又は鈍形、直立~斜上する。脈は網状、不明瞭だが、光の下では見える。胞子葉は栄養葉の基部から生じ、茎は長さ5~7㎝、栄養葉を越える。胞子穂は狭い線形、長さ2~3㎝、先が鋭形、胞子嚢を15~28対もつ。胞子は淡色、表面は類網状又は類平滑。 2n = 240-960。
9-1 Ophioglossum thermale Kom. var. nipponicum (Miyabe et Kudo) M.Nishida  コハナヤスリ    synonym  Ophioglossum nipponicum Miyabe et Kudo
 草地や半裸地に生育する。栄養葉は楕円形~卵形、長さ2.5~5㎝、無柄。葉幅は中央よりも下で最も広く、var. thermaleは中央より上で最も広い。

 10  Ophioglossum vulgatum L.  ヒロハハナヤスリ(ハルハナヤスリ) 
 日本(北海道~九州中部)、朝鮮、中国、インド、スリランカ、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアに分布。英名は-tongue , southern adders-tongue , adders-tongue fern。中国名は瓶尔小草 ping er xiao cao 。
 春に生育し、7月には枯れる。植物は高さ10~30㎝。根茎は直立し、肉質の根を束生する。根は水平に広がり、匍匐枝に似ている。葉は普通1個。普通の茎は下部が淡色、長さ6~9㎝、わずかに強健、地下に深く埋まる。栄養葉は無柄、楕円形又は狭い卵形、まれに卵形、長さ6~10㎝×幅1.5~4(5)㎝、わずかに肉質~草質、基部は楔形~切形~円形、ときに急に狭くなり、縁は全縁、先は鈍形~急に鋭形。脈は明瞭、網状。胞子葉は栄養葉の基部から生じ、長さ9~18㎝又はそれ以上。胞子穂は長さ2.5~3.5㎝、直径約0.2㎜。先は鋭形、栄養葉を超える。胞子表面は明瞭で粗い網状。2n = 240-1140。


 参考

1) Flora of China
 Ophioglossum
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=122987
2) Flora of North America
 Ophioglossum
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=122987
3) Flora of Zambia
 genus Ophioglossum
 https://www.zambiaflora.com/speciesdata/genus.php?genus_id=8

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